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こんにちは!「クックビズ総研」編集部の峯林です。
先の12月4日、アゼルバイジャンのバクーで開かれたユネスコで 「和食」の無形文化遺産への登録が決定されました。

日本全体で盛り上がりを見せる中、無形文化遺産登録のきっかけをつくった「NPO法人日本料理アカデミー」副理事長であり、京都の老舗日本料理店「たん熊 北店」店主の栗栖正博さんにお話をお伺うことができました!

和食を無形文化遺産に?はじめは、門前払いだった

───「NPO法人日本料理アカデミー」さんは、今回の無形文化遺産登録のきっかけを作られたそうですね。日本人の伝統的な食文化を次代に受け継いで行くという理念のもと、設立されたということですが、どのような活動をされているのでしょうか?また、今回の世界遺産登録にいたった経緯をお聞かせください。

栗栖さん:私たち「日本料理アカデミー」は、日本料理・和食の啓蒙に向けて、さまざまな活動を続けてきました。菊乃井の村田さんを理事長として、和食文化を守るため、今回の文化遺産登録に向けた活動を2011年にスタートさせました。

以前より、京都市内の学校給食における食育活動に取り組んでいた私たちは はじめ、文科省に嘆願書を提出しました。何度か出したんですが、すべて門前払いで終わってしまったんです。
そこで今度は、嘆願書を京都府に提出したんです。京都府はユネスコ登録に向けて検討委員会を設置してくれ、ついに国に提案へとこぎつけました。

和食がすき!という子どもたちが少ない。料理人たちの危機感

───スタートから登録まで2年半の歳月がかかったんですね。

栗栖さん:文化遺産登録の活動のきっかけは、私たち日本料理の料理人としての危機感から始まっています。文科省が嘆願書を受け付けなかったのには、明治までさかのぼる話になりますが、「食事= はしたないもの」という考えが日本文化の根底にはあって、「食文化」が教育現場に一切組み込まれてこなかった背景があります。

また、京都の学校給食でも、人気メニューは1位.ハンバーグ 2位.カレー 3位.スパゲティであり、10位内に和食はありません。これでは、和食が好き、和食料理人になりたい、という子供たちはなかなか出てきません。

さらにもうひとつ。たとえば和菓子の世界でいうと、紅葉を愛で、インスピレーションを得て菓子を創出した先人たちと、「これが和菓子だ」と教えられコピーするだけの今の職人も、また違うのです。

私たちが文化として愛してきた「和食」が、30年後、40年後に残っているか、 不安が大きくのしかかっていました。

───海外では日本の食文化の評価は非常に高いですよね。

栗栖さん:海外では非常に評価されています。日本人は、海外での流行や海外の評価には非常に敏感です。そこで私たちは、「日本人に和食を見直してほしい!」と世界が認める日本の食文化として、ユネスコでの無形文化遺産登録の活動をスタートさせたのです。

今の飲食業界は、変わるべき。調理師免許を国家資格にしたい

───では、文化遺産登録をきっかけに、今後そういった動きが活発になると。

栗栖さん:和食伝統文化の高等教育機関の設置をめざしています。大学で和食の文化・科学・技術を学べる研究部門や学部の設置といった専門家の育成環境をつくっていくのもそのひとつですね。

また、私は今の調理師免許の制度にも課題があると捉えています。今の制度では免許を持っているか、持っていないかに関係なく、飲食店を経営できるし、料理もできる。

そうではなくて、たとえば医師や弁護士などのように調理師免許も国家資格にしたい。免許がなければ調理できない、お店を運営できない、 というくらいの強いものにできないかと思います。そうすれば、不正を起こしたら剥奪もできるし、もっと真剣に料理に取り組むはずです。

和食料理人の地位向上をめざす

───それが料理人の地位向上にもなりますよね。

栗栖さん:ヨーロッパでは、料理人というのは日本よりもっと大事にされています。
海外に比べて、日本は自国の食文化への意識が低いのもありますが、
今回の文化遺産登録が、和食料理人の地位と質が向上する足がかりになればよいなと思います。

───飲食業界の地位向上は、クックビズのめざすところでもあります!
大きな変革を迎えようとしている「和食」のこれからがとっても楽しみです。
栗栖さん、ありがとうございました!
(取材・記事作成:峯林)

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