こんにちは。クックビズ総研インターンのLillyです。
ミシュラン2017で星を獲得したお店の中に、地方公共団体である奈良県が携わる異色のフレンチレストランがあるのをご存知でしょうか?

そのレストランの名前は「シエル エ ソル (CIEL ET SOL)」と言います。

東京・白金台にある「シエル エ ソル (CIEL ET SOL)」は、奈良県が奈良の食材の魅力を発信するためにオープンした「ときのもり」2Fにあります。

「ときのもり」とは?

「ときのもり」は、奈良の魅力をさらに伝えるための情報発信拠点として、2016年に東京・白金台にオープンしました。
1Fがカフェ&ショップ、2Fがレストランになっているアンテナショップです。

1Fのカフェ&ショップ「Livrer(リヴレ)」は、奈良「くるみの木」「秋篠の森」のオーナー、石村由起子氏がプロデュースをつとめ、吉野檜の棚に並ぶ美しい奈良の工芸品や食材を眺めながら大和茶やお手製のお菓子を味わえるお店として、多くの人々に愛されています。

2Fのレストラン「CIEL ET SOL(シエル エ ソル)」は、オープンから1年足らずでミシュラン一つ星を獲得した実力派フレンチ。
フレンチ界の重鎮・音羽和紀氏がプロデュースし、そのご子息・音羽創氏が腕を振るう県産食材を使ったフレンチは、“LA CUISINE NATURELLE (ラ キュイジーヌ ナチュレール/自然体の料理)”を体現しているとして高い評価を得ています。

どうして奈良県がレストランを始めたのか?
今回は、そんな「ときのもり」の魅力に迫るべく、奈良県農林部マーケティング課の小嶋さんにお話を伺ってきました。


L:本日はよろしくお願いします。

小:お願いします。

L:早速ですが、なぜ県がレストランを始めたのですか?

小:農林部の活動の一環ですね。奈良県農林部では、食材の生産から流通・販売に至るまでの一連の流れを指導・振興し、奈良県産食材の消費に繋げるという活動を行っています。そこで、奈良県産の食材の発信と販路拡大のために「ときのもり」を始めたんです。

L:物産館ではなく、レストランなんですね。

小:レストランなら、「美味しい食材がある」ということだけではなく、「美味しい食べ方がある」ということも発信できますからね。観光情報発信所があり、そこが物産館を兼ねてます。「ときのもり」の1Fのショップでも奈良県の物産品を扱っているのですが、まほろば館との差別化のために高価格帯の商品も置いています。

L:「ときのもり」は価格帯としては高級レストランに当たりますが、高級路線にした意図は何なのでしょうか?

小:もともと、奈良県は農業産出額が47都道府県中44位で、山が多いため大規模農家が少ないんです。なので、量で勝負をするのが難しいんですよね。なので、たとえ少しの量でも良いものをお出しできる高級価格帯のレストランにしました。白金という立地は、価格帯が高くなっても良いものに目を向けてくださるお客様が多いということで選定しました。

L:奈良に近い大阪ではなく、東京なんですね。

小:奈良は大阪のベッドタウン的要素も強いですし、元から近郊農業として奈良の食材が大阪の市場に出荷されていることもあって、元から大阪とのつながりは強いんですよ。なので、新たな層に食材の魅力を発信するために東京にしました。

L:奈良から遠く離れた土地ということもあって、苦労もあったのでは?

小:オープン当初は苦労しましたよ。「奈良県の食材」というだけではなかなかお客さんは来てくれなくて。県はどちらかというと広報が苦手なので、音羽さんとの連携PRなどで集客を図りました。イベントをしたり、マルシェをしたり。

Livrer(ときのもり1Fカフェ)
Livrer(ときのもり1Fカフェ)

CIEL ET SOL(ときのもり2Fレストラン)
CIEL ET SOL(ときのもり2Fレストラン)

L:お店の経営において、奈良県とお店の運営者の関係はどうなっているのですか?

小:Livrer(1Fカフェ)とCIEL ET SOL(2Fレストラン)の運営者に共同企業体制という形で法人を作ってもらって、法人との委託契約という形にしています。売り上げのパーセンテージによって、県と法人両者に収入が入るという形式ですね。

L:お店のスタッフは、奈良県庁の方なんですか?

小:いえ、公務員は法律上飲食店での勤務はできないので、人員などの裁量権は運営者に一任しています。日本橋の観光物産館常駐職員がサポートはしていますが。

L:「CIEL ET SOL」の運営者としてオトワレストランを選ばれたのには、どのような経緯があったのでしょうか。

小:オトワレストランのオーナーシェフである音羽和紀さんは、地産地消のパイオニアであり、奈良県の食材の魅力を発信していくには適した運営者であるとの判断からです。

L:なぜ和食じゃなくてフランス料理なのですか?

小:あくまで私見ですが、奈良の食材は大量生産ができないことやまだまだブランド力が弱いことから、京料理などとは違う切り口で勝負したいという知事の意図であったかと思います。フランス人観光客は奈良の訪問率が高いですしね。

L:「ときのもり」の反響はやはり大きいですか?

小:そうですね。食・デザイン関係の雑誌や100以上のメディアに取り上げていただき、奈良県の食材に注目していただけたという意味では効果はあったのではないかと思います。「CIEL ET SOL」がミシュランで星を獲得したことにより、さらに知ってもらう入り口ができたのかな、と思います。

L:お店の拡大は考えていらっしゃいますか?

小:まだそこまでのビジョンはありませんが、チャレンジとして成果を結んで、PRの仕方や食材の販売の仕方としてのロールモデルになれば、もしかしたら拡大することもあるかもしれません。

L:農業について、何か他に特徴的な取り組みはあるのでしょうか?

小:平成28年4月に「なら食と農の魅力創造国際大学校」という学校を新設しました。従来までの農業従事者の育成にとどまらず、食のスペシャリスト(シェフ)と、アグリマネジメント(農業の担い手)の両方を育てようという取り組みです。校長に「ひらまつ」の社長である平松博利氏を迎え、2つの学科の学生たちが互いの学びから新しい発見を得て、相乗効果で奈良県の食を盛り立てていける学校にしたいと考えています。

L:本日は、ありがとうございました!

最後に

奈良の食材の魅力を、一流シェフの手によって最高の状態で味わえることで人気の「ときのもり」。
新しい魅力発信の手法として、私たち一般消費者の認知向上のみならず、地方創生や農業振興などの様々な可能性を秘めているのではないかと感じました。
東京に居ながらにして大和の風を感じられる「ときのもり」、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか?